歴史を語るほどの立場ではないのですが
以前に投稿した【知っているようで知らない「クラフトビール」の定義とは?「地ビール」との違いを解説】の地ビール時代のお話と、売り手として感じるクラフトビールの歴史の移り変わりを、私なりにかみ砕いて少しお話しします。
地ビール=お土産ビール
約30年前に、酒税法の改正により小規模から醸造できる醸造所が増えました。
どこかに旅行に行くとお土産屋さんにある、その地で作られたビール。
当時は、日常的に飲むものではなく、その地を訪れた記念に…というのが、地ビールの立ち位置だったような気がします(というほど、私もこの部分の歴史は年齢的にあまり知らないwww)。
今のクラフトビールの技術に比べると、当時は決して味を追求したものではなく、あくまでお土産品。
地ビール時代は、既に麦汁が濃縮された液体となった“モルトエキス”が使用されており、それをお湯で薄め酵母を投入し(もっと本来は工程はありますが)、発酵の作業からビール造りとされていたようです。
決してモルトエキスが悪いわけではないのですが、現代のビール造りから考えると、モルトエキスを主原料としていたことが【地ビール=美味しくない】というイメージを強くしたと言わざるを得ない気がします。
ビール造りにおける基本原料は4つ【麦芽・水・ホップ・酵母】。
造るスタイルによって、麦芽の配合から水質など全ての工程において計算しつくされ、その工程一つ一つを一貫して自分たちの手で造られることが主です。
単純に、麦芽と水を混ぜてホップと酵母を入れたらビールになるよっていう時代ではありません。
【地ビール屋さん】そう言われることは今でも少なくありません。
もちろん、“その地のビール”という意味では間違った表現ではありませんが
現在は、海外からインポートされるビールも多いため《クラフトビール》という表現の方が正しいのかもしれませんね。
クラフトビールブームの移り変わり
ここからが本題です。
私の感じるクラフトビールの歴史。
お店を始めた頃が2017年、
今のブームと比べると、オープン当初はクラフトビールブームのかけだしだったのかなと。
2017年頃から全国各地にブルワリーが増え始め、私も毎日のように新しくできるブルワリー情報を検索しては、「●●で醸造してた人が独立したんだな~」=こういうスタイルのビールを得意としているんだろうな~など、ブルワーの履歴まで調べたりして新たに誕生するブルワリーのファーストバッチを仕入れるのを楽しみに、日々BAR営業をしていました。
当時ブルワリーの件数は、全国で500件もないくらいだったので、その地に根差し、特産品を使用したビールや、とにかく苦いIPAなど、スタイルも今ほど多様ではありませんでした。
当時は瓶の製品か樽が主流でしたが、
決して美味しいビールだけではなかったのも事実。
日にちの経過とともに味の変化も著しいものが多く、美味しく変化するものもあれば(これも不思議ですが)、そうでないものも…。
酸化による液色の変化、二次発酵による味の変化…
今となってはなぜ変化するのかは、導入している設備や技術で大きく差が出る事が理解できますが、当時は酸化や劣化などを加味した上で“クラフトビールの魅力なんだ”って言い聞かせてた部分が大きかったような…笑
ここ2~3年は、特に缶製品が主流となってきたこともあり、瓶に比べて缶製品は酸化リスクや劣化のリスクが少なくなりました。とはいえ、せっかくタンク内で密閉させて造られたビールも、カンニングの際にあっという間に空気に晒され酸化してしまう…という残念な商品も少なくありません。
「クラフトビールだから劣化は仕方ない」という言い訳の通用しない時代にシフトしています。
現在人気のあるブルワリーは、設備導入や酸化リスクを極力抑えるための技術の進歩により、「いつ飲んでも美味しい!」を実現しており、今後もこのようなブルワリーが生き残っていくのだと思います。
こうして、クラフトビールブーム以降も時代の流れでクラフトビールシーンの歴史は移り変わりを見せています。
地ビール時代の二の舞になってはいけない。
ブルワリーが増加している今こそ!売る側が正しい知識を持ちこだわりをもって仕入れる事、そして本当に美味しいものをお客様へ伝えることの大切さを日々痛感しています。
偉そうなことを書いてしまいましたが、私は美味しいビールが造れるわけではありません。
ただ、このクラフトビールをブームで終わらせるのではなく、文化として根付かせるためにはとても大切なことだと感じます。
本当に奥深い世界、日々勉強です。